前置き
「フットオンエア」という”イングランドプレミアリーグを中心にフットボールの話をどこよりもゆるく話すPodcast“を運営しているきょうへいと申します。
開幕節、いきなりアドレナリン全開の“This is Anfield”な試合をぶちかましたリバプール。
本当に世界で一番エンタメ性が高いクラブだと痛感した試合でした。キエーザのゴールでクッションを叩いて喜び奥さんにうるさいと怒られたのは内緒です。
そんな開幕節を振り返る記事です。それでは早速いきましょう。
試合結果


リバプールは前半立て続けにゴールに迫るもののなかなか得点できない展開が続き、焦れてきたところでコミュニティシールドに続きエキティケがオープニングゴールをゲット。
後半に入りガクポのカットインで追加点、そこから後手に回る時間が続きセメニョの2ゴールで同点に追いつかれるものの途中出場のキエーザが88分に勝ち越しゴール。そして94分!にサラーのダメ押しゴールで4-2として見事開幕説を勝利で飾りました。
自分のリアルタイム時の前半総括と試合総括も合わせて載せておきます。
語りたいポイント
Positive
エキティケ活躍の理由
この試合(そして今季のプレミアリーグ)のオープニングゴールを飾ったエキティケ、ガクポのゴールもお膳立てしておりリーグデビュー戦で1G1Aと早くも大活躍。
イサクが来てもポジションは渡さないと言わんばかりの暴れっぷりですが、彼の凄みはどこにあるのでしょうか。
Embed from Getty Images①ポジショニングの妙
下に掲載しているのは
1枚目がチーム全体の試合を通した選手の配置図(22がエキティケ)
2枚目がエキティケの今節のヒートマップ
3枚目がエキティケの24/25、ヌニェスの23/24、フィルミーノの20/21のヒートマップ比較です。(より特徴が出ているヒートマップを抜粋したのでシーズンが揃っていないのはご愛嬌で🙏)



(すべて引用:sofascore)
エキティケに対してフィルミーノと近いという指摘が散見されますが、まさに彼のボールを触る位置はフィルミーノとの相似を感じさせます。(逆にヌニェスはゴール前で勝負する選手というのがわかりやすいですね。)
FWの選手ではあるものの、下がってきてボールを受けて味方への展開に貢献するプレーはかなり高いレベルでこなしており
落としたボールがヴィルツやマカリスターを経由してサラーやガクポなど強力なウイングに良い形で届けられることを考えると、リバプールのチーム特性とマッチしていることが想像に難くないと思います。
前回の記事でエキティケとヴィルツの相性の良さを言及しましたが、エキティケはチームの特性にもハマっており流石のデータ班という補強ですね。
②ポストプレーの巧みさ
この試合でもエキティケのポストプレーからのチャンスは散見されたのですが、個人的に一番驚いたのが後半開始直後の45:58の場面です。
アリソンのロングボールから始まったプレーですが、ガクポの前へのパスをエキティケがフリックしてヴィルツが抜け出したシーンの視野の広さ、スペース認知の能力の高さはエキティケのポストプレーの巧みさを代表したシーンと言えるでしょう。(動画で紹介したい…!)
ちなみに1点目のゴールシーンはヴィルツが受けにきて空けたスペースに走り込み、パスを受けてゴールまで運んだ形でしたがここでもエキティケのスペース認知の能力の高さが際立っていますね。
フィニッシュの冷静さも◎。
2点目のアシストも空いたポケットに入り込みDFを引きつけてガクポにリリース、素晴らしい👏
エキティケ、早くも大ブレイクの予感です🔥
マカリスターの帰還
プレシーズンマッチはコンディション不良なのか、出場時間が短いorサブ組での調整といった形での出場が多かったマカリスター。
コミュニティシールドでもスタメンに名前がなく、気になっていたリバプールファンも多かったのではないでしょうか。
フラーフェンベルフは昨シーズン最終節のレッドカードにより出場停止、コミュニティシールドのショボスライとカーティスのボランチコンビにはやや不安を感じる結果となっており、
この試合のボランチのユニットには注目が集まっていました。
そんな中開幕に合わせてスタメンに復帰したマカリスターは72分までプレーし、エキティケのゴールのアシストも記録。
やはりリバプールの心臓だと感じさせられるパフォーマンスを披露しました。
そしてこの試合のマカリスターのベストプレーとしてあげたいのが54:40頃からの、右サイド奥でのリカバリーのシーンです。
フリンポンが競り合いの中でボールを奪われ、上がってきたトリュフェールへ出た裏へのパスを読んでスライディングでボールを回収したというプレーなのですが、
まさしくマカリスターのインテリジェンスが凝縮されているようなプレーでした。(これも動画で紹介したい…!)
次節はフラーフェンベルフが復帰し、ヴィルツも含めた現時点の中盤のベストメンバー3枚が揃うことが予想されますが本当に楽しみです。
報われたキエーザ
昨夏唯一の補強であったキエーザが開幕節をドローで終えそうなチームを劇的ゴールで救いました。
Embed from Getty Images88分に訪れた歓喜の瞬間ですがスタッツを見るとxG(ゴール期待値*1)が0.16、xGOT(枠内ゴール期待値*2)が0.86となっており、
これは「難しいシュートチャンスにゴールする可能性の高いシュートを放つことが出来た」ということになります。

(引用:sofascore)
これは出番が無くても腐らず準備を怠らずにいたキエーザが報われた瞬間で、リバプールを見てきた方であればそんなキエーザが喜びを爆発させている姿に胸が熱くなったことでしょう。
もはやデータで語る必要もないくらいエモーショナルなシーンであり、This is Anfieldを体現したこういう瞬間に魅せられてリバプールファンはどんどん沼にハマっていくわけですね😇
キエーザは退団濃厚と言われている中ではありますが、リバプール公式のインタビューに以下のように回答しています。
“I’m playing for one of the best clubs in the world and I feel the passion of the fans, I feel the energy. Playing at Anfield is mesmerising, it’s just incredible and I’m so happy to be here.”
(訳)「世界最高のクラブの1つでプレーすることが出来て、ファンの情熱とエネルギーを感じています。アンフィールドでプレーすることは魅力的で、それは本当に信じられないくらい素晴らしいことなんだ。ここにいることが出来て本当に嬉しい。」
残留するのかどうかはキエーザ本人とフロントとの話し合いと届いたオファー次第だと思うので、
どう転ぶのかはわかりませんが残ってくれるなら新たなカルトヒーロー誕生の予感に胸が踊りますね。
*1 xGとはシュートを打つ前までの状況を加味して、該当のシュートがゴールになる確率を0~1の数値で表す数値です。
*2 xGOTとはシュートが打たれた後の状況を加味して、該当のシュートがゴールになる確率を0~1の数値で表す数値です。
詳しくはefStatsさんのサイトがわかりやすいのでこちらをご参照ください。
Negative
被カウンター時のリスク管理
今節の失点は両方ともカウンターからの失点です。
展開も似通っており奇しくもサラー→ショボスライのところでボールをロストしてからのセメニョに決められるパターンで一時は同点に追いつかれているのですが、ここは大きな改善点として認識する必要があるといえます。
1失点目のショボスライのボールロストは前回記事で書いたように、ショボスライの個人のプレー選択に問題がある箇所になるでしょう。
元々攻撃のプレーヤーでありチャレンジかセーフティかの判断にミスが出るのは想定出来る話なので「お前の後ろに遠藤はいないんだぞ」とスロットに言い聞かせてもらうしかないですし、成長の余地がある部分だと思います。
ただしショボスライのボランチ起用には大きな可能性があると感じており、実際にスタッツとしても良いデータが出ている側面もあります。(以下3つの指標はper90という90分間の回数に均した指標ではないので、出場時間が長い選手は各スタッツの回数が大きくなることを留意してご覧ください)
まずはキャリー(ボールの運び出し)ですがチームで頭ひとつ抜けて60回を記録しています。
また、キャリーの質自体も良い水準にあり前進した距離もチームで1位(図のPrgDist)、前進率も49.3%(図のPrgDist/TotDist)となっており、
つまりショボスライはチームにおけるボールの運び出しにおいての貢献度が高かったということになります。

(引用:FBREF)
次にパスの指標においてもパスのトータル距離でチームで1位。
長い距離のパスも11本チャレンジし8本成功と高水準、マカリスターはこの試合ロングパスが0回となっておりお互いのパスレンジの補完が出来ていることも好印象です。

(引用:FBREF)
キャリーとパスの指標で見た通り、
ショボスライはこの試合においてチームの中でボールを動かす指標の双方でトップとなっており、攻撃の潤滑油としての貢献度の高さは目を見張るものがあると言えます。
そして守備指標についてもタックル回数も4回とチームで1位を記録。その4回のタックルで全てボールを奪い返しており質も申し分なし。

(引用:FBREF)
ヒートマップは以下のようになっており、右サイドを中心にピッチのあらゆる場所で顔を出していることがわかります。
ちなみに走行距離もチームトップの11.5Kmを記録しています。

(引用:sofascore)
ここまでの指標を見た通り、中盤においての攻撃への貢献度、走力、守備貢献度はかなり光るものがあり、
指摘されている判断の部分が磨かれればボランチでのプレーでも高いクオリティを発揮できる選手になり得ると思いました。
ここに強力なミドルシュートもあることを考えると、背番号も相まって我らがキャプテンスティービーのような選手になってくれることも期待してしまうわけです。
というわけで1失点目は個人の成長で改善出来る失点と見て良さそうなので、それよりも2失点目のチームで失点を減らせる部分にフィーチャーしようと思います。
まずはこの場面、2-1でリードして残り15分と大きなリスクを掛ける時間ではありません。
であるのに関わらず中盤の3枚、両サイドバックが全員相手のペナルティエリアまで上がってきておりネガティブトランジションで置き去りにされています。
状況を整理すると
選手の配置については72分にマカリスターとエキティケがout カーティスとゴメスがin。
それに伴いゴメスがRSBに入ったことで遠藤はボランチのポジションへ移行、
ショボスライが一列上がりヴィルツと並び4-2-4(もしくは4-4-2)のような形になっています。
プレーの流れはショボスライが大きく落ちてアリソンからのボールを回収、
そこからパスを繋いで右サイド奥のサラーにボールを届けサラーのマイナスのパスがずれ奪われたところから失点となっています。
結論から述べると、一連の流れを見た際に個人的にはカーティスのリスク管理の判断、ひいてはチームとしてのルール設定に疑問を呈したいと思っています。
Embed from Getty Imagesこの場面でフィルターとして残る必要がある選手は
ロバートソン(LSB)
ゴメス(RSB)
遠藤(DMF)
カーティス(DMF)
の中から1名だと思うのですが、ゴメスと遠藤はサラーにボールを届けるまでにビルドアップに関わっておりサラーのサポートとして顔を出しているので除外。
そしてロバートソンとカーティスについてはボールを奪われた際に、ペナルティエリア奥のファーの位置にいるのですがカーティスはロバートソンと被る位置に遅れて顔を出しています。
同じポジションに遅れて入ってくる必要性は薄く、カーティス個人の判断としてはあまり良い判断ではなかったと言えるでしょうし
チームとしてもネガトラの人数管理という面でルール設定は必要なのではないかと思います。この辺りの改善は今シーズンの伸びしろ部分になるでしょう。

ケルケズとセメニョの1on1
開幕節から古巣対決となったケルケズですが、リバプールでのリーグデビュー戦はややほろ苦い結果に終わったと本人も思っているのではないでしょうか。
Embed from Getty Imagesボールへチャレンジする姿勢は良いものの、対面のセメニョにかなり手を焼いていた印象で後手に回る対応が多くなってしまいました。
ただし、セメニョは個の質でいえばクーニャ、クドゥスなどと並ぶレベルの選手ですしプレミアリーグの経験も既に積んでいる選手なのでここからの成長に期待したいと思います。
あとがき
というわけでかなり長くなってしまいましたが、言いたいことは大体全部言いました。
と思いましたが、サラーの開幕戦ゴール関与神話は不滅だったりアリソンは200試合おめでとうだったりヴィルツのシュート機会創出のスタッツがすごかったり(この辺はまた別の試合の記事で触れようと思います)と全然まだ喋り足りません。
まあ何はともあれ一番言いたいのは
勝ちゃOKということです。
次節はイサクをかけてデービーバックファイトですよね、勝つぞ✊

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